全国各地の有名寺社に目を向けると、地域や信仰の歴史に応じた興味深い掛け声の差異が存在する。千葉の大本山・成田山新勝寺では、「鬼は外」を一切口にせず「福は内」のみを連呼する。本尊である不動明王の絶大なる慈悲と威光の前では、いかなる鬼も心を改め屈服するため、境内に鬼が存在しないという教理に基づく。
東京最古の寺院である浅草寺でも、観音菩薩の前には鬼が寄り付かないとされ、「千秋万歳 福は内」という雅やかな掛け声が響き渡る。鬼を単なる敵として排除するのではなく、仏徳によって調伏・包摂するという思想の深まりが、各地の儀式に豊かなグラデーションを与えている。