主祭神として祀られているのは、水門や河海を司る速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)だ。天地開闢の神話において、河と海の境にあって万物の穢れを呑み込み、浄化する神威を持つとされる。平安時代の格式を示す延喜式神名帳に名を連ねる式内社としての誇りは、千有余年の歳月を経てもなお微塵も揺らいでいない。
天平5年(733年)編纂の『出雲国風土記』にもその名が刻まれており、かつて意宇郡に属した社の一角として重要な位置を占めていた。全国約8万の神社を包括する神社本庁の記録を紐解いても、これほどまでに原初の水神信仰の純度を保ち続ける社領は珍しい。境内を満たす厳かな空気は、古代の人々が海川の境目に感じた畏怖の念そのものだ。