境内へ足を進めると、朱塗りの開運橋の先に現れるのが、世界一の高さを誇る巨大な「張り子の福寅」だ。体長約6メートル、ユーモラスに首を上下に振るその姿は、記念撮影に興じる観光客で常に賑わっている。だが、この大寅は単なるフォトスポットではない。毘沙門天の威光を具現化し、参拝者の背後から厄を祓う重要な結界の役割を果たしている。
張り子の虎は、古くから病魔退散や家内安全の縁起物として庶民に親しまれてきた。信貴山の境内には、この親寅に寄り添う子寅や、白虎、さらには各所に小さな寅の像が無数に鎮座している。その一つひとつに異なる表情と祈りが込められており、境内を歩くこと自体が虎の霊力を全身に浴びるフィールドワークとなる。
売店で授与される手のひらサイズの張り子の福寅を自宅の玄関や仕事場に持ち帰り、吉方に向けて祀る参拝者も多い。風が抜けるたびに首を揺らす虎の姿は、日常の中に信貴山の霊気を留め置くための確かなアンカーとして機能している。