ピカソはなぜ絵を壊した?キュビスム誕生の真実と革命の秘密

ピカソはなぜ絵を壊した?キュビスム誕生の真実と革命の秘密

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キュビスムのわかりやすい解説において最大の疑問となるのが、「なぜ対象をわざわざ解体して描いたのか」という点です。結論から言えば、ピカソやブラックは絵をデタラメに崩したのではなく、「人間の知覚と現実のあり方をより正確にキャンバスへ写し取るため」に対象をバラバラにしました。

人間が物体を認識するとき、実際には単一の固定された視点からだけ見ているわけではありません。正面から見たり、横から覗き込んだり、斜め上から見下ろしたりしながら、脳内でそれらの情報を統合して立体として把握しています。しかし、従来のルネサンス的遠近法では、「ある一瞬、ひとつの視点から見た影と形」しか描けず、対象の全体像を描くことは不可能でした。

ピカソは自著や回想録、親しい画商カーンワイラーへの証言のなかで、「私は目に見えるものをそのまま描くのではなく、知っているものを描く」と語っています。対象の正面・側面・背面を同時に1枚の平面に描き込む手法こそが、キュビスムが辿り着いた「リアリズムの新しい到達点」だったのです。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。