世間が知る樹木希林は、達観したユーモアと鋭い洞察力で物事の本質を突く「人生の達人」だった。しかし、家庭内における彼女は、娘に対して時に冷徹なまでのリアリズムを突きつける母親でもあった。内田也哉子は、母が決して子ども扱いをせず、幼少期から一人の自立した個として接してきた記憶を振り返る。
「おごらず、人と比べず、面白がって平気で生きればいい」——病魔に侵されながらも最期まで飄々と日常を慈しんだ希林が遺した言葉の数々は、娘の手記や語りを通じて現代を生きる私たちの心に深く染み渡る。無駄なモノを持たず、執着を手放し、老いや死すらもエンターテインメントのように観察する姿勢。それは決して冷淡さではなく、生という不条理を丸ごと引き受ける覚悟の表れだった。