夕暮れが迫ると、駅の南側に張り巡らされた辰巳新道に赤提灯が灯る。わずか数十メートルの細い路地に、カウンター数席の小さなスナックや立ち飲み屋がぎっしりと肩を寄せ合う。昭和の面影を色濃く残すこの一角は、かつての文豪や映画人が愛した深川の夜の縮図だ。
食通たちの足を止めさせるのは、路地裏の老舗だけではない。人気ドラマ『孤独のグルメ』で主人公・井之頭五郎が舌鼓を打った焼き鳥や名物のつくね、生ピーマンの組み合わせをはじめ、深川めしや大衆酒場の煮込みまで、胃袋を刺激する名店が目白押しだ。近年は古民家を改装したモダンビストロやナチュラルワインの専門店も点在し、食の選択肢は驚くほど重層的になっている。