彼女の大胆な身体表現が芸術的な結実を見せた代表作のひとつが、2010年公開の主演映画『ユリ子のアロマ』である。触覚と嗅覚が異常に敏感なアロマセラピストという特異な役柄を、江口は一切の媚びを排した生々しいリアリティで演じきった。
甥である男子高校生の汗の匂いに抗えない欲望を抱く主人公。倒錯したテーマでありながら、江口の演じるユリ子はどこまでも孤独で、切ないほど人間的だ。官能的なシーンであっても、過剰な演出に頼ることなく、視線の揺らぎや微かな呼吸の変化だけで観客の感情を揺さぶる。体当たりの演技とは肉体を晒すことではなく、人間の心の深淵を晒すことなのだと、彼女の芝居は無言のうちに証明していた。