「バナナと牛乳は一緒に食べてはいけない」という説のルーツを辿ると、古代インドの伝統医学アーユルヴェーダに行き着く。アーユルヴェーダでは、相反する性質を持つ食材を同時に摂取する「ヴィルッダ・アハラ(消化に悪い組み合わせ)」という概念が存在する。加熱処理された牛乳の「冷性・重性」と、熟したバナナの「甘味・酸味」が体内で衝突し、消化の火(アグニ)を弱めて「アマ」と呼ばれる毒素を生み出すと考えられてきたのだ。
一方で、現代の栄養学はこの現象をまったく異なる視点で解明する。栄養学の知見によれば、バナナに含まれる果糖や食物繊維と、牛乳に含まれるたんぱく質や脂質は、それぞれ独立した代謝経路をたどる。伝統的な警告は「未熟なバナナの強い酸味が牛乳のカゼインを凝固させ、消化に時間がかかること」を実体験として捉えたものと推測される。つまり、伝統知識と現代科学は矛盾しているのではなく、観察の切り口が異なるに過ぎない。