険しい山道を越える旅人にとって、かつて峠道は命がけの難所だった。その途中で疲弊した旅人に力を与えたのが、街道沿いで売られていた素朴な甘味である。時代を経てもなお、人々がこの味を追い求める理由はどこにあるのだろうか。
今回の現地取材で明らかになったのは、単なるノスタルジーにとどまらない深い歴史的背景だ。寒冷な峠の気候の中で、出来立ての温かい饅頭を提供し続けた工夫。それは過酷な旅路を行く人々への「温かいもてなしの心」そのものであった。歴史の波に飲まれることなく受け継がれた精神が、現代人の心をも強く惹きつけている。