旅行者が真っ先に覚える「rico」ですが、元来のricoの意味はスペイン語で「豊かな」「裕福な」を指す形容詞です。食に対して用いると「コクがあって美味しい」「甘美でリッチな味」という含みを持つため、アイスクリームやお菓子、タパスのようなカジュアルな軽食を頬張った際のリアクションとして極めて自然に響きます。しかし、歴史あるガストロノミーの現場やフォーマルなディナーの席で、大人が口元を拭いながら「¡Qué rico!」とだけ呟くと、家庭内でのくだけた物言いのように響き、場にそぐわない幼さを感じさせてしまう場面が生じます。
そこで重要となるのが、buenoとricoの違いおよびdeliciosoの使い方の整理です。一般に「bueno」は品質や味付けが全体として優れていることを指し、最も汎用性が高く客観的な信頼感があります。とりわけ絶対最上級の「buenísimo(ブエニシモ)」に変化させた形は、カジュアルとフォーマルの双方で失礼にならず、心からの絶賛を伝える万能の褒め言葉として重宝されます。
一方の「delicioso」は、英語のdeliciousと同語源ですが、日本語の「非常に美味でございます」「絶品です」に相当するフォーマルな響きを帯びています。大衆居酒屋でピンチョスを1本つまんだ程度で大げさに「¡Está delicioso!」と叫ぶと、現地の人々にはやや芝居がかった過剰な表現に映りますが、コース料理を提供する格式高いレストランや、手料理を丹精込めて振る舞ってくれた家庭のホストに対して使うには、これ以上ない敬意に満ちた賛辞となります。