医学界において、かつて「揺さぶられっ子症候群(SBS:Shaken Baby Syndrome)」と呼ばれていた病態は、現在より包括的な概念である「乳幼児頭部外傷(AHT:Abusive Head Trauma)」として定義されています。頭蓋骨の中で脳が激しく打ち付けられることで、脳表面の微細な血管が断裂し、硬膜下血腫やクモ膜下出血、さらには脳実質の損傷を引き起こすメカニズムです。
親が最も注視すべきは、外見上の傷が見当たらないにもかかわらず、赤ちゃんの体内で進行する揺さぶられっ子症候群初期症状です。損傷のレベルによって現れる兆候は段階的に変化します。
- 軽度〜中等度のサイン:あやしても笑わず視線が合わない、普段と違うぐずり方が続く、哺乳力が著しく落ちてミルクを飲まない、異常に眠り続ける(傾眠状態)。
- 重篤な危険サイン:食べたものを勢いよく吐き出す嘔吐噴水状、手足をピクピクと硬直させるけいれん発作、呼吸が浅く不規則になる、大泉門(頭頂部の柔らかい部分)が風船のように張る。
では、これらの症状いつから出るかという点ですが、受傷直後から数時間以内に急変するケースが大半を占めます。強い衝撃を受けた直後にぐったりして意識を失う例もあれば、微細な出血が徐々に脳を圧迫し、受傷後24時間から48時間をかけて徐々に不機嫌や嘔吐などの神経症状が顕著化するパターンもあります。揺らしてしまった心当たりから数日間は、子どもの覚醒状態と哺乳状態を慎重に観察し続ける必要があります。