このカクテルが生まれた背景には、一人の政治家の情熱と郷土愛がある。名前の由来となったのは、フランスのブルゴーニュ地域圏に位置するディジョン市の元市長、フェリックス・キール氏だ。第二次世界大戦後の荒廃した時代、彼は地元の経済と特産品を立て直すため、市庁舎を訪れる賓客への公式レセプションでこの特製ドリンクを振る舞い続けた。
当時、酸味が強すぎて単体では評価が伸び悩んでいた地元の白ワインと、名産のカシスリキュールを掛け合わせるという大胆な発想。それは瞬く間に評判を呼び、やがて彼の名を冠した「キール」として世界へ羽ばたくことになった。地域の窮地を救った一杯のグラスは、現在もフランス文化の誇りとして息づいている。