生涯発達論を語る上で避けて通れない巨頭が、もう一人いる。エリク・H・エリクソンだ。発達心理学の分野において、ハヴィガーストとエリクソンはしばしば対比されるが、その視座には決定的な差異がある。
エリクソンが精神分析をベースにし、各段階で生じる「心理社会的危機(例えば青年期の同一性対同一性拡散)」の内面的な葛藤に光を当てたのに対し、ハヴィガーストのアプローチは圧倒的に「社会への適応と行動」に重きを置いている。環境との相互作用のなかで、人間が果たすべき具体的な責務は何なのか。この生々しい現実性が、ハヴィガースト理論の持つ最大の引力だ。
内面の葛藤に耽溺するだけでは、人生の具体的な局面を打開できない。社会から何を求められ、自分はそれにどう応答できているのか。ハヴィガーストが突きつけるその冷ややかな問いかけこそが、言い訳を許さないリアルな処方箋として機能する。