サウンド面における卓越した構築美も、本作の求心力を支える重要な要素です。2007年春にリリースされ大ヒットを記録した「明日晴れるかな」が重厚なオーケストレーションを配したシンフォニックな構成だったのに対し、「風の詩を聴かせて」はアコースティックギターのストロークを前面に押し出した温もりのあるオーガニックな響きを追求しています。
レコーディング現場では、桑田自身が抱えるMartinなどのアコースティックギターを用い、開放弦の美しい響きを活かしたコードボイシングが試行錯誤されました。キーは親しみやすいGメジャーを基調としながら、メジャーセブンスやテンションコードが絶妙な陰影を落とし、光と影が交錯するハワイの夕暮れ時のような情景を描き出しています。
ギター愛好家の間でもコード進行の美しさは定番の弾き語り曲として定評があります。複雑な超絶技巧に頼るのではなく、誰でも押さえられる基本コードの中に、一音だけ切ない代理コードを滑り込ませる手腕こそ、ポップマエストロ・桑田佳祐の真骨頂です。シンプルだからこそ歌声の繊細なニュアンスや息遣いがダイレクトに伝わり、聴き手の胸を直接打つのです。