1990年代半ばの開館以来、那須高原を代表する文化観光拠点として君臨していた那須オルゴール美術館。公式発表や関係者の声を総合すると、2023年3月31日の閉館に至った背景には単一の要因ではなく、複数の構造的課題が重なり合っていました。
最大の要因として挙げられるのが、歴史的アンティークオルゴールの維持・修繕の難しさです。館内に展示されていたシリンダー式やディスク式の自動演奏楽器は、19世紀から20世紀初頭にかけてヨーロッパやアメリカで製作された貴重な文化遺産ばかりでした。これらは温度や湿度の変化に極めて敏感であり、木製キャビネットのひび割れ防止や金属製櫛歯(コーム)の調律など、専門の修復技術者を要する継続的なメンテナンスコストが年々増大していました。
さらに、築四半世紀を超えた施設建物の老朽化と大規模改修の負担が追い打ちをかけました。高原特有の厳しい冬の寒暖差や湿気への対策、バリアフリー化の推進など、現代の安全・快適基準を満たすための改修投資は数億円規模に達すると試算され、コロナ禍以降の団体ツアー減少や個人旅行へのシフトという観光トレンドの激変期において、事業継続の判断を極めて困難なものにしました。