オードリー春日が約20年間暮らした拠点は、木造モルタル2階建てアパート「むつみ荘」の2階角部屋に位置するむつみ荘201号室でした。当時の公開映像や建築図面から起こされたむつみ荘の間取り図を確認すると、専有面積は約13.2平方メートル(約4坪強)。玄関を開けると靴を脱ぐスペースもそこそこに、一口コンロと小さなシンクが配された約1.5畳のキッチンスペースが広がり、その奥に主室である和室6畳が配置されていました。
室内には独立した浴室が存在せず、入居者が直面する最大の特徴がむつみ荘の風呂なし事情です。さらにトイレは廊下に面した共同トイレ(和式便器)であり、各部屋に水回りのプライベート空間はほぼ皆無でした。室内設備といえば、押し入れが一間分、そして春日邸のシンボルとも言える小さな窓が2箇所あるのみ。エアコンは長年設置されておらず、夏は窓を開け放ち、冬は厚着で凌ぐという、昭和中期の下宿アパートそのものの生活導線が保たれていました。
春日俊彰はこの空間を極限まで使い倒していました。部屋の中央に置かれたちゃぶ台、角に積まれた雑誌や衣装、壁に直張りされたポスターやカレンダー、そして押し入れの上段を寝床や物置として立体的に活用する配置は、徹底的な機能美すら感じさせる構造でした。ロケで訪れた共演者が一様に「空気が淀んでいる」「昭和の残像がそのまま固着している」と驚嘆したこの間取りこそ、春日の無駄を一切削ぎ落としたライフスタイルの原点だったのです。