ネットショッピングのレビューやSNS上で散見される典型的な失敗例が、「20倍〜30倍」や「ズーム機能付き」と銘打たれた安価な光学機器を購入してしまうケースです。
光学の物理原則において、レンズの口径(対物レンズの大きさ)が一定である場合、倍率を上げるほど取り込める光の量は反比例して減少します。さらに「ひとみ径(対物レンズ有効径÷倍率)」が小さくなると、人間の瞳孔径よりも射出される光の束が細くなり、視野全体が暗幕を張ったかのように薄暗くなってしまいます。舞台照明が暗転した瞬間、視界は完全なブラックアウトに陥り、演者の姿を見失うことになります。
また、ドン・キホーテの激安コーナーや100円均一ショップ(ダイソー・セリア等)で数百円〜千円前後で販売されている簡易オペラグラスについても、過度な期待は禁物です。これらの多くは前述した「ガリレオ式」またはプラスチック製の粗悪なレンズが使用されています。中心部こそ辛うじてピントが合っても、周辺視野が歪曲収差によって酷く歪み、左右の視差調整(視度調整)ができない構造になっているものが散見されます。
実際に会場で使用したユーザーからは、「開演10分で酷い頭痛と眼精疲労に襲われた」「手ブレと像の歪みで画面酔いしてライブに集中できなかった」という悲鳴が上がっています。数万円のチケット代と遠征費を投じて現場に足を運ぶのであれば、光学機器の最低ラインとして「レンズ全面マルチコート(フルマルチコート)」が施された国内信頼メーカー(ビクセン、オリンパス、ニコン、ケンコー等)の1万円クラス以上の製品を基準に据えるべきです。