布施のお好み焼きを語る上で避けて通れないのが、双璧をなす「よしひろ」と「てらまえ」の存在です。両店は同じ布施という土地に根を張りながら、目指す味のベクトルにおいて鮮やかなコントラストを描いています。
「よしひろ」が到達した軽やかさと自家製マヨネーズの技巧
創業から70余年の歴史を誇る「よしひろ」の真骨頂は、看板メニューである「よしひろ焼き」に凝縮されています。大ぶりの海老、帆立、豚肉、イカが贅沢に織り込まれた生地は、一口運ぶと驚くほど軽やかな口当たりです。その秘密は、厳選された国産山芋のきめ細やかなすりおろし方と、生地を鉄板へ落とす際空気を包み込むように成形する職人の手捌きにあります。
さらに見逃せないのが、酸味を極力抑え卵黄のコクを際立たせた自家製マヨネーズと、甘口・辛口のブレンドソースの調和です。鉄板の上でソースが焦げる香ばしさにマヨネーズのまろやかさが重なり、ボリュームがありながら最後の一口まで重さを感じさせません。加えて、特太の蒸し麺を用いたオムそばも絶品であり、洗練された鉄板フレンチを思わせる丁寧な仕事が光ります。
「てらまえ」が放つ下町のエネルギーと油かすの重厚なパンチ
一方で、足代北の地で熱狂的なファンを惹きつける「てらまえ」は、東大阪のソウルフード文化をストレートに体現しています。こちらの主役は何と言っても鮮度抜群の「油かす(牛の小腸を低温でじっくり揚げたもの)」です。
鉄板の熱によって油かすから溶け出した上質なヘット(牛脂)が生地全体に行き渡り、キャベツのシャキシャキとした甘みを極限まで引き立てます。表面はカリッと香ばしく揚げ焼き状態になり、中はトロトロ。太麺を使用した名物焼きそばにおいても、この油かすの旨味がソースと絡み合い、他店では真似のできない強烈なインパクトを放ちます。気取らない店内の活気と相まって、働く大人の活力を呼び覚ます力強さが宿っています。