風刺画をさらに詳細に観察すると、農民の足元や周囲に散りばめられたモチーフに、当時の平民を苦しめていた具体的な制度が描き込まれています。
平民が背負わされている荷物や足元に置かれた「重石(おもし)」には、当時の主要な税金や義務の名称が刻まれています。
- タイユ税(直接税):平民のみに課せられた重い財産税・人頭税。
- 十分の一税(ディーム):教会の維持や聖職者の生活のために収穫高の10分の1を徴収する制度。
- コヴェ(賦役):無償で道路工事や領主の農作業に従事させられる強制労働。
- 塩税(ガベル):生活必需品である塩に莫大な税を上乗せした悪名高き専売制度。
さらに、農民の足元で畑の作物を食い荒らすウサギやハト、キャベツをかじる害獣が描かれている版画も存在します。当時、狩猟は貴族だけの特権であり、平民の畑を貴族の飼いバトや獲物が荒らしても、農民がそれを追い払ったり捕殺したりすることは死刑や厳罰に値する重罪でした。風刺画は、生きるための糧さえ奪われる農民の絶望的な境遇を精緻に浮き彫りにしていたのです。