感染症対策が日常化して以降、家電製品全般を除菌シートやエタノールスプレーで拭く習慣が定着しました。しかし、テレビ画面アルコールNGの理由は、パネル最表面に施された特殊薄膜の化学的性質にあります。
現在の液晶テレビや有機ELテレビの表面には、蛍光灯や太陽光の映り込みを防ぐ「アンチリフレクション(AR)コーティング」や「アンチグレア(AG)処理層」がナノメートル単位の厚みで蒸着されています。市販の無水エタノールや消毒用エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤は、このコーティング樹脂を化学的に溶解・変質させてしまいます。
一度アルコール成分によって侵食されたコーティング層は、光の屈折率が狂い、画面全体が白く濁ったような「白化現象」や、まだら模様の「シミ」となって定着します。これがテレビ画面コーティング剥がれの真相です。物理的な傷と異なり、化学的な変質であるため、後から研磨したり拭き直したりしても元に戻すことは不可能です。
さらに見落とされがちなのが、ナチュラルクリーニングとして人気のテレビ画面掃除に重曹やセスキがダメな理由です。重曹(炭酸水素ナトリウム)やセスキ炭酸ソーダは弱アルカリ性を示します。ディスプレイ表面の保護層はアルカリ性に極めて弱く、加水分解を引き起こしてコーティングをボロボロに剥がしてしまうリスクがあります。また、重曹の微細な結晶が研磨剤として作用し、画面全体に無数のヘアライン傷を刻み込む結果となります。