本作の屋台骨を支えたのは、間違いなく主演・松嶋菜々子の凄まじい怪演だ。それまで彼女が築き上げてきた華やかで清純なトップ女優のイメージを完全に封印。ダウンジャケットにキャップを目深にかぶり、一切の笑みを排した鉄仮面のような佇まいは、観る者に底知れぬ恐怖と哀愁を感じさせた。
そして彼女が派遣される阿須田家の父親・恵一を演じた長谷川博己の存在も見逃せない。妻を自殺に追い込みながら「子どもたちを愛しているかわからない」と言い放つ情けないダメ親父を、生々しい人間味と脆さで見事に体現した。無慈悲な家政婦と、弱さを露呈する不完全な父親。この二人の強烈なコントラストが、物語の推進力となった。