サフランに対する「怖い」というイメージを決定づけているもう一つの、そして現代において極めて現実的な要因が、植物としてのイヌサフラン(コルチカム)との混同です。厚生労働省や各自治体の保健所は、毎年秋になると「有毒植物による食中毒への厳重警戒」を繰り返し呼びかけています。
家庭菜園や山林での誤食事故として頻繁にニュースを賑わせるのは、サフランではなく「イヌサフラン」です。名前に「サフラン」と付き、同じ秋に透き通るような紫色の花を咲かせるため、植物の知識が浅い一般人が「庭にサフランが自生している」と勘違いし、球根や葉を調理して食べてしまう痛ましい事故が後を絶ちません。
イヌサフランは、全草に猛烈な細胞分裂阻害毒である「コルヒチン」を含有しています。致死量はごく微量で、誤食すると激しい嘔吐、下痢、多臓器不全、呼吸麻痺を引き起こし、解毒剤が存在しないため死亡率が極めて高い危険な毒草です。一方、料理に使われる本物のサフラン(アヤメ科)にはコルヒチンは一切含まれておらず、日常の料理でスパイスとして使う範囲(数ミリグラム〜数本程度)であれば全く無害です。
ネット検索で「サフラン 毒」「サフラン 死亡事故」といったショッキングな見出しがヒットするのは、このイヌサフランの致死毒性が無差別にサフラン本体へ結びつけられてしまった風評被害に他なりません。