精神科医になるための最初の、そして最大の難関は言うまでもなく医学部への合格です。国内に82校ある大学医学部の入試難易度は、全大学学部の中で最難関の頂点に君臨しています。
大手予備校のデータに基づく医学部受験の難易度と偏差値を見ると、国公立大学医学部は共通テストで85%以上の得点率がボーダーラインとなり、二次試験の偏差値は65〜72.5以上を要求されます。私立大学医学部であっても、最も学費が安価な順天堂大学や国際医療福祉大学、慶應義塾大学などでは偏差値70前後を要し、偏差値65を下回る医学部は国内に存在しません。私立大学へ進学する場合は6年間で2,000万〜4,000万円超の学費負担が発生するため、家庭の経済力という別の壁も立ちはだかります。
そこで、他学部を卒業した人や社会人の間で現実的な選択肢として浮上するのが社会人からの医学部学士編入です。国立大学を中心に約30校近くで実施されており、通常は2年次または3年次に編入して4〜5年間で医学部を卒業します。
しかし、学士編入は決して「抜け道」ではありません。募集定員は各大学5名〜10名程度と極めて狭小であり、実質倍率は10倍から30倍に達します。試験科目は「生命科学」「英語(TOEFL/TOEICのハイスコア提出含む)」「小論文」「集団・個人面接」で構成され、高度な分子生物学や生化学の学識が問われます。
実際に一般企業から学士編入を果たした医師の手記や研修医のコミュニティ検証では、次のような生々しい証言が寄せられています。
「理系出身で製薬会社の研究職にいたが、生命科学の論文読解と面接対策に毎日4時間の学習を続け、合格まで3年を費やした。文系出身者の合格者もゼロではないが、統計学や生化学の素養を独学でトップレベルまで引き上げる覚悟がなければ、何年受けても一次試験を突破できない」(都内大学病院精神科・専攻医の手記より)
医学部再受験(一般入試)と学士編入のいずれを選ぶにせよ、現在の仕事を辞めて無収入で数年間勉強に専念する生活リスク、合格後も最低6〜8年間は本格的な給与が得られない経済的耐久力が冷徹に問われます。