「歯が浮くようなセリフ」や「歯が浮くようなお世辞」は、フィクションの世界だけでなく、日常のオフィスや恋愛の局面でも唐突に顔を出します。言っている本人は相手を喜ばせているつもりでも、受け手や周囲の第三者は強烈な気恥ずかしさを覚え、赤面してしまうケースが後を絶ちません。
恋愛やプライベートの場面で典型的なのが、映画の脚本をそのまま引用したかのような過度なロマンチック表現です。
- 「君の瞳を見ていると、まるで満天の星空の中に吸い込まれていくようだ」
- 「たとえ全世界を敵に回すことになっても、僕だけは君の永遠の味方でいるよ」
- 「君のいない世界なんて、色のないモノクロ映画と同じさ」
二人の関係性が極限まで深まり、文脈が共有されていれば成立する可能性もありますが、関係が未成熟な段階で発せられると、受け手は感動するどころか「鳥肌が立つような居心地の悪さ」に襲われます。
一方、ビジネスシーンにおける「歯が浮くようなお世辞」や「歯が浮くような褒め言葉」は、さらに露骨な形で現れます。
- 「部長の先日のプレゼンは、もはやスティーブ・ジョブズの伝説のスピーチを完全に凌駕していました!」
- 「〇〇課長のご判断は1ミリの狂いもなく常に正解ですから、私たちはただ付いていくだけで幸せです」
- 「先生のような天才的なリーダーと同じ空気を吸えるだけで、人生の価値を感じます」
このような言葉が発せられた瞬間、会議室の空気がサッと冷え込み、周囲が失笑を押し殺す事態に陥ります。受け手にとっても「裏で何を企んでいるのか」「本心ではバカにしているのではないか」という猜疑心を生む引き金にしかなりません。