孤高のポエトリーラッパーとして知られる不可思議/wonderboyですが、その根底には読書と演劇、そして言葉に対する極めて純粋な探求心が存在していました。1987年12月30日生まれ、埼玉県出身。本名は渡邉健太郎(わたなべ けんたろう)といいます。
幼少期から活字に親しみ、宮沢賢治や中原中也、谷川俊太郎といった近現代の詩人・文学者の著作を貪るように読む少年時代を過ごしました。埼玉大学教育学部に進学した彼は、教育や人間心理、言葉が他者に与える作用について学びを深める傍ら、自らの感情をダイレクトに吐き出す場所としてラップミュージックと出会います。当時の一般的な日本語ラップが踏襲していたUSライクな韻の踏み方やストリートカルチャーの枠組みに違和感を抱いていた彼は、演劇的な語り口とスポークンワーズを融合させた独自の手法を確立していきました。
大学在学中の2009年、自主制作CDR『不可思議奇譚』を手売りすることから本格的なキャリアが始動します。MCバトル「新宿スポークンワーズスラム(SSWS)」での鮮烈な優勝劇を経て、鬼才クリエイターが集うインディーズレーベル「LOW HIGH WHO? PRODUCTION」に合流。彼の知的で内省的でありながら、時に剥き出しの狂気すら孕んだパフォーマンスは、アンダーグラウンドの枠を瞬く間に突破していきました。