みかんの生産量日本一を誇る和歌山県において、生産現場の農家が当たり前のように実践しているのが「有田剥き(ありだむき)」、別名「和歌山剥き」と呼ばれる手法です。一般家庭で多く見られる「ヘタ(果梗部)から爪を立てて剥く」スタイルに対し、この産地直伝の剥き方は驚くほど合理的で無駄がありません。
有田剥きを成功させるコツは極めてシンプルです。まず、ヘタの反対側にある窪み(果頂部、いわゆるお尻の部分)に両親指をあて、果実を外側へ向けて大胆に真っ二つに割り裂きます。続いて、割れた半分をさらに縦半分に割り、合計4つのブロック(4つ割り)にします。あとは、それぞれの房を皮から外側へ押し出すように剥がすだけで、ひと口サイズになった果肉が美しく現れます。
この手順が「手が汚れない簡単な剥き方」として絶賛される理由は、果皮の構造にあります。柑橘類の皮の外側(フラベド)にはリモネンなどの精油成分を含む油胞が密集しており、爪を立てると油胞が破裂して爪の間に黄色い色素や強い香りが沈着します。しかし、果頂部から割るアプローチをとれば、外皮を引きちぎることなく内側から自然に剥離するため、爪の中に皮のカスが入り込む心配がありません。現場で収穫作業を行いながら品質を確かめる農家の知恵から生まれた、極めて機能的なライフハックです。