日本人が無意識に行ってしまい、現地の人々をぎょっとさせてしまう代表的な行動が「器の持ち方」と「ゴミの扱い」です。日中両国の食文化の違いは、調理法だけでなく身体作法にまで深く根ざしています。
日本の和食では、ご飯茶碗や汁椀を手に持って口に近づけて食べるのが美しいマナーとされます。しかし中国において、中国食事マナー器を持つのはNGです。小皿や茶碗をテーブルから持ち上げて食べる行為は、「物乞い(乞食)が恵んでもらった残飯をかきこむ仕草」に重なるとされ、非常に下品で卑しい行為とみなされます。
中国式では、「器は卓上に置いたまま、レンゲや箸を使って口に運ぶ」のが唯一の正しい作法です。スープを飲む際も、器に直接口をつけるのは厳禁であり、必ずレンゲですくって静かに口へ運びます。
もうひとつ、日本人が最も戸惑うのが中国食事マナー骨や殻の捨て方です。中華料理では、骨付き肉や有頭エビ、魚などが豪快に調理されます。口の中に残った小骨や殻を取り出す際、日本人は「手で口を覆い、ティッシュや皿の端に隠す」ように処理しがちですが、中国では全く異なる作法が求められます。
- 手で口から直接引っ張り出すのはNG:箸やレンゲを口元に添え、舌を使って静かに押し出すようにして取り分ける。
- 残骸の置き場所:テーブルの上に置かれた専用の小皿(骨碟:グーディエ)に置くのが現代の標準。大衆店などでは卓上のクロスの上に直接出す文化も残るが、いずれにせよ料理が盛られた大皿や自分の取り皿の中央にゴミを戻すのは厳禁。
食文化研究の視点から見れば、日本が素材の瑞々しさをそのまま味わう「水の文化」であるのに対し、中国は強火と油で食材の旨味を極限まで引き出す「火の文化」です。大皿から熱々の料理を各自の小皿へ移し、卓上の器を起点にダイナミックに楽しむ構造そのものが、作法の根底に存在しています。