本事件の量刑において最大の論点となったのが、日本の刑事司法における量刑のデファクトスタンダードである永山基準との関係です。1983年の最高裁判決以来、殺害された被害者数が1人の場合、身代金目的誘拐殺人や極めて残虐な前科持ちのケースを除き、無期懲役が選択されるのが従来の裁判官裁判における確立した実務慣例でした。
しかし、岡山地裁で開かれた裁判員裁判の死刑判決(2013年2月14日)は、その強固な慣例を破る結果となりました。法廷では、計画性の高さ、動機の自己中心性、遺体損壊という冷酷な犯行後の情状、そして何より被害者の無念さと遺族の処罰感情が極限まで考慮されました。一般市民から選ばれた裁判員たちが、従来の量刑相場にとらわれず、事件そのものの絶対的な悪質性を直視して判断を下した瞬間でした。
このように、被害者1人の死刑基準を巡っては、過去の判例の踏襲を重んじる職業裁判官と、凶悪犯罪に対する処罰感情や社会通念を反映させようとする裁判員の感覚との間に緊張関係が存在していました。本件はその議論を象徴する出来事となりました。