カタールW杯スタジアム建設の真実|30兆円と死者数・跡地利用の現在

カタールW杯スタジアム建設の真実|30兆円と死者数・跡地利用の現在

カタールW杯スタジアム建設の真実|30兆円と死者数・跡地利用の現在に関する主要なデータを丁寧に解説いたします。

カタールワールドカップにおけるスタジアム建設において、世界中の建築界を震撼させたのが屋外オープンエアスタジアムの冷房技術です。大会が酷暑の6〜7月を避けて異例の11〜12月開催に変更されたとはいえ、中東の秋は日中の気温が30度を超える日も珍しくありませんでした。

カタール大学の工学部教授サウド・アブドゥルアジズ・アブドゥルガニ博士(通称「Dr. Cool」)が開発を指揮したこの冷却システムは、単に冷気を送り込むという単純なものではありません。流体力学と熱力学のシミュレーションを極限まで突き詰め、「ピッチ上と観客席だけをピンポイントで冷却する」というマイクロクライメット(微気候)コントロールを実現しました。

座席の下に無数に配置された特製ノズルから毎秒数メートルの微風で冷気を噴出させ、ピッチ脇の大型送風口からは芝生を覆うように重い冷気の層を敷き詰めます。冷気は重力によって低層部に留まり、温まった空気はスタジアム上部へ逃げると同時に、排気口から回収されて再び冷却装置へ循環するクローズドループ構造が採用されました。さらに、この巨大なエネルギーを賄うために郊外に800メガワット規模のアル・ハルサ太陽光発電所を建設し、カーボンニュートラルな冷却運用を目指すなど、工学的には極めて高度なサステナビリティの実験場でもありました。

中島 亮太
著者

中島 亮太

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。