ここで、ネット上で蔓延している危険な誤解を厳しく是正しなければなりません。「大切なものは目に見えない」という言葉は、決して「目に見える言動や行動を軽視していい」という意味ではありません。
家族社会学や心理臨床の現場で頻出するのが、いわゆる「モラルハラスメント」や「共依存」の現場において、加害側がこのロジックを濫用するケースです。
「自分は口下手だから言葉には出さないが、心の中では愛している」
「形あるプレゼントや生活費を渡すことだけが愛ではない。見えない絆を信じろ」
これらはすべて、サン=テグジュペリの思想の歪曲にすぎません。王子さまの行動を思い出してください。彼はバラのために、具体的に水を汲み、冷たい夜風を防ぐために衝立を立て、重いガラスの覆いを運ぶという泥臭い物理的ケアを毎日怠りませんでした。キツネもまた、毎日決まった時間に同じ場所に通い続けるという「行動の反復」を要求しました。
目に見えない本質(愛や信頼)は、何もない空中から自然発生するスピリチュアルな霧ではありません。「日々の目に見える具体的な行動の集積」の影としてのみ、後から輪郭を現すものです。行動も示さず、配慮も払わず、ただ「心の中の見えない愛」を要求するのは、単なる心理的搾取にほかなりません。この点を混同してしまうと、健全な人間関係の土台そのものが崩壊してしまいます。