「取引先が破産同然の状態になり、社長とも連絡が取れない。だから売掛金を全額貸倒損失として落とした」――中小企業の税務調査において、国税調査官が最も厳しく目を光らせるのがこのシチュエーションです。元国税調査官の税理士は「調査官にとって、売掛金の貸倒損失は格好の否認ターゲット。経営者の主観的な『回収を諦めた』という事情は、税法上1ミリも通用しない」と証言します。
法人税法における貸倒損失 損金算入要件は、企業の恣意的な利益調整を防ぐ目的で極めて厳格に運用されています。もし企業が「もう回収できそうにない」という理由だけで自由に損失計上を認められてしまえば、業績が好調な決算期に債権を勝手に償却して利益を圧縮し、法人税を不当に減らす不正が横行しかねないからです。
税務調査で損金算入が否認された場合、損金計上した売掛金が利益に加算され、追徴課税(本税+過少申告加算税や延滞税)が課されます。悪質とみなされれば重加算税の対象にもなりかねません。焦げ付きが発生したときこそ、焦って帳簿上で落とすのではなく、「国税庁が定める基準に完全に合致しているか」を冷徹に検証する法的な手続きが求められます。