大森元貴の人生において、決定的な転機となったのが中学時代の経験です。卓越した才能と鋭敏すぎる感性を持っていた彼は、当時の画一的な学校空間や人間関係に強い違和感を抱き、次第に教室へ通うことが困難になっていきました。
不登校傾向に陥った思春期の息子に対し、世の多くの親は「何とか学校へ戻そう」と焦り、説得を試みるのが一般的です。しかし、大森の母親が取った行動は全く異なるものでした。彼女は大森に対してこう告げたといいます。
「無理して学校に行かなくていい。その代わり、あなたが本当に夢中になれる音楽を本気でやりなさい」
大森が自室にこもって何時間もパソコンと向き合い、狂ったように作曲に没頭していた時期、母親は部屋に食事を運び、その熱中を静かに見守り続けました。学校という社会的レールから外れる恐怖を、母親の「絶対的な受容」が無力化させたのです。この無条件の愛と信頼こそが、大森の強靭な自己肯定感のコアとなり、後に世の中の孤独や痛みを全肯定するミセスの名曲群を生み出す源泉となりました。