確定申告を行うにせよ、転職先で年末調整を受けるにせよ、絶対不可欠な書類が前職の「源泉徴収票」です。ここで多くの退職者が「源泉徴収票はいつもらえるのか」という焦燥感に苛まれます。ネット上の労務相談や知恵袋、SNS上でも「11月中旬に辞めたのに12月末になっても源泉徴収票が送られてこない」「転職先から提出を急かされているのに会社が対応してくれない」といった悲痛な叫びが毎年無数に散見されます。
法律上の期限はどうなっているのでしょうか。所得税法第226条において、会社は退職した従業員に対し「退職の日以後1か月以内」に源泉徴収票を交付しなければならないと明確に義務付けられています。つまり、11月15日退職であれば12月15日まで、11月30日退職であれば12月30日までに交付しなければ法律違反となります。
しかし実務現場の舞台裏を覗くと、法定期限ギリギリ、あるいは遅延が発生する構造的な要因が存在します。11月退職者の最終給与は、当月払いであれば11月下旬に確定しますが、翌月払いの企業では「12月10日」や「12月25日」に支払われます。源泉徴収票は最終給与の金額や社会保険料の控除額が完全に確定しなければ発行できません。さらに12月の人事労務部門は、在籍全社員の年末調整書類の回収と検算でパンク状態に陥っています。このため、すでに社を去った退職者の書類作成はどうしても後回しにされがちな力学が働きます。
転職先から源泉徴収票の提出を求められて困惑した退職者の手記には、次のような生々しい記録が残されています。
「前職の人事へ電話したところ、『12月給与の確定後、全社の年末調整が終わってから一括発送します』と冷たくあしらわれた。転職先の総務からは『12月5日までに原本を出してもらえないと、今年の年末調整には間に合いません』と通告され、板挟みになって激しいパニックに陥った」(30代男性・IT企業転職者)
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、退職届を提出する段階、あるいは最終出社日の時点で「転職先での年末調整に使うため、最終給与の確定後、至急データまたは原本の送付をお願いします」と人事担当者へ釘を刺しておくことが重要です。万が一、請求しても発行を拒まれたり会社が倒産したりした場合は、所轄の税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、税務署から元勤務先へ行政指導を入れてもらう強力な法的手続きが用意されています。