後藤田正晴氏が遺した数々の語録や著書(『情と理 カミソリ後藤田回顧録』『支える力』など)は、政策担当者のみならずビジネスリーダーの必読書として読み継がれています。彼の思想の根底にあったのは、悲惨な戦争体験から培われた徹底した平和主義と現実主義でした。
「国民に嘘をつく政府は必ず滅びる」「官僚が政治家に忖度を始めたら国家は危うい」といった言葉は、情報公開の透明性と権力の暴走を厳しく戒めるものでした。湾岸戦争時に持ち上がった自衛隊の海外派遣論調に対しては、「一度下駄を履かせたら、軍靴の音は止まらなくなる」と慎重論を展開。憲法9条の精神を守りつつ、国家としてのリアリズムを追求する姿勢を崩しませんでした。