物語のクライマックスとなる最終回(第10話)では、音と練、そして朝陽との関係に静かな決着が訪れます。視聴者の間でも長年議論を呼んできた「音と練は結ばれたのか」という問いに対する真相は、形式的な恋人関係を超えた深い人生の肯定にあります。
音は、自分を深く愛し、現実的な安定と救いを与えてくれた朝陽からのプロポーズを断ります。朝陽自身もまた、音の心の中にある「練への消えない想い」を見抜き、「僕を好きにならなくていい、でも僕を諦めないでほしい」と葛藤しながらも、最後には音の背中を押す決断を下しました。このシーンで見せた西島隆弘の静かな涙と諦念の演技は、放送当時から現在に至るまで高く評価されています。
そして物語は、音と練が北海道へと向かうトラックの道中、そして思い出のファミレスでの長い対話へと収束します。坂元裕二脚本の真骨頂とも言える、何気ない日常会話の中に溢れ出す感情の機微。2人は互いの想いが完全に通じ合っていることを確認しながらも、即座に同棲したり結婚したりする道は選びません。
音は北海道の介護施設で再び自分の足で働き、練は東京の引っ越し屋で誠実に働き続ける。遠く離れた場所にいながらも、互いの存在が暗闇を照らす光となり、人生を生き抜く力になる。タイトルの『この恋を思い出してきっと泣いてしまう』が回収される瞬間は、失恋の涙ではなく、「誰かを本気で愛したという記憶が、これからの人生を支えてくれる」という温かな祈りの涙でした。