スマートフォンの画面をスクロールするだけの毎日に、人々はどこか物足りなさを感じ始めている。アルゴリズムが推奨する服を買い、同じようなスタイルで街を歩く。そんな画一化された日常への反発が、生地という「物質」への興味を呼び起こした。実際に指先で触れ、重みを感じ、光の当たり方で表情を変える布地には、デジタルの画面では決して再現できない情報量が詰まっている。
都内のIT企業に勤める女性(26)は、「週末に生地を選んでいる時間が、一番のデジタルデトックスになる」と語る。自分で選んだ生地を馴染みの仕立て屋に持ち込む、あるいは簡単なミシンワークで自分だけのスカートを作る。このプロセス自体が、現代人にとっての極上の癒やしとなっているのだ。