カオナシは本来、自分自身の声を持たない無色透明な存在だった。しかし、青蛙を飲み込んだことで初めて言葉を獲得する。つまり、作中でカオナシが見せる強欲さや横暴さは、最初に呑み込んだ青蛙の心がそのまま増幅された結果なのだ。
千尋によって「苦団子」を食べさせられたカオナシが、溜め込んだものをすべて吐き出すクライマックスシーンで、青蛙は無事に吐き出されて救出される。無傷で生還した青蛙が最初に見せた安堵の表情は、毒気を抜かれた油屋の日常を取り戻す象徴的なカットだ。悪意と救済が交錯するこの構造こそが、本作を単なるファンタジーにとどめない深い味わいを与えている。