曲の冒頭から繰り返される「君にいいことがあるように」という印象的なリフレインは、多くのファンが『ストロー』を語る上で欠かせない象徴的な一節です。朝起きて飲むカフェオレや、テーブルの上に置かれた赤いストロー。この日常の断片を切り取った描写は、単なる同棲カップルの甘いノロケ話にとどまりません。
当時のラジオ番組や音楽雑誌のロングインタビューでaiko本人が語った回顧によると、ストローという日常の消耗品に託されたのは「ささやかだけれど、毎日確実に手渡すことができる小さな幸せの祈り」でした。コンビニやカフェで何気なく渡されるプラスチックのストロー。それが赤色であるという小さな偶然に対して「今日はいいことがあるかもね」と笑い合う瞬間こそが、代えがたい愛情の証左となっています。
一方で、aikoの恋愛ソング歌詞の魅力と評判の核心は、その幸福感の裏側に潜む「儚さ(はかなさ)」にあります。歌詞を丹念に読み解くと、「あたし」は「君」との関係が永遠に続くとは決して盲信していません。「今この瞬間が奇跡のように尊いからこそ、せめて今日という一日に幸福が訪れてほしい」という、喪失の予感を孕んだ切実な願いが込められているのです。