ネット上には「カサカサ音がしたら綿棒にオリーブオイルをつけて絡め取る」「ピンセットを使って自分で毛を抜く」といった民間療法が散見されますが、これらは耳科学的な見地から極めて危険な誤解に基づいています。
外耳道の皮膚には、鼓膜の中心部から外側へ向かって古い角質を自然に押し出す「自浄作用(マイグレーション機能)」が備わっています。健康な状態であれば、耳垢は自然に外へと排出される構造になっており、奥深くまで耳掃除をする必要性は本来存在しません。耳掃除の正しいやり方として医学的に推奨されているのは、「入浴後にタオルや綿棒で耳の穴の入り口付近(手前1cm程度)を優しく拭うだけ」であり、頻度も月に1〜2回で十分です。
異音を感じたときに綿棒を深部へ挿入してしまうと、自浄作用のベルトコンベアを逆行させ、乾燥した耳垢の粉末を鼓膜のキワに押し固めてしまいます。さらに、外耳道の深部は骨部外耳道と呼ばれ、皮膚の厚さがわずか0.1〜0.2mm程度しかありません。ここに硬い綿棒の軸が触れるだけで容易に皮下出血や擦過傷が生じ、結果として剥がれた皮膚片が新たなカサカサ音の元凶を作り出すという皮肉な事態を招きます。