二人の合作名義の中でも、後世に最も大きな影響を与えたのが『ドラえもん』だ。1969年、小学館の学年別学習雑誌で連載を開始した本作は、締め切り直前までアイデアが出ずに追い詰められた藤本が、部屋に迷い込んだ猫と娘のおきあがりこぼし人形から着想を得て誕生したと言われている。
藤本が提唱した「すこし・ふしぎ」の頭文字を取った「SF漫画」というコンセプトは、日常生活の延長線上にあるリアリティとファンタジーの完璧な融合をもたらした。未来のひみつ道具が提示する夢と、のび太という不完全な主人公が見せる人間味は、子どもだけでなく大人の心も捉えて離さなかった。