この「権威」と「権力」の相剋や決断の重量感は、日本の名作映画でもリアルに描写されてきた。太平洋戦争の終結を描いた歴史映画『日本のいちばん長い日』では、陸軍の反対や政府内の意見対立が極限に達する中、昭和天皇が「聖断」という形で国家の最終決断を下す歴史的瞬間が克明に刻まれている。国家の崩壊を回避するため、本来政治に関与しないはずの象徴が下した重苦しい決断の重みは観る者の胸を打つ。
一方で、現代の未曾有の危機に対応する国家機構を描いた映画『シン・ゴジラ』では、巨大不明生物の出現という緊急事態に対し、内閣総理大臣と官邸スタッフが法律の壁や米軍との関係に揉まれながら防衛出動を決定していく。有事における最高指揮権が内閣総理大臣に帰属している事実と、政治・行政手続きのリアリティが強烈なインパクトをもって提示された。
歴史の転換点における天皇の聖断と、現代の危機管理における首相の行政決断。新旧の二作品は、時代によって移り変わる「国家の最高意志決定」のあり方をみごとに表現している。