『バス・ストップ』が発売後瞬く間に全国へ浸透した背景には、当時の音楽流通における「有線放送」と「リスナーの共感構造」があります。
発売当初は決して派手なプロモーションが行われたわけではありませんでした。しかし、夜の街やタクシー、ラジオから流れる平浩二の甘く切ないボーカルが水商売関係者やドライバーの間で評判を呼び、有線リクエストチャートを急上昇。オリコンチャートでも上位にランクインし、最終的に公称ミリオンセラーを達成するロングヒットとなりました。
ヒットを決定づけた最大の要因は、平浩二の歌声が持つ説得力と「視覚的リアリズム」の融合です。「バスを待つ間に 涙を拭くわ」というフレーズに代表されるように、主人公の未練と気丈さが交錯する繊細な感情が、平浩二の伸びやかなクルーナー・ボイスによって聴き手の脳裏へ鮮明に焼き付けられました。当時の歌謡番組で平浩二が見せた、憂いを帯びた真摯な佇まいも視聴者の共感を強く後押ししました。