ファンや一般の観客の間で頻繁に交わされるのが「海老蔵と團十郎は何が違うのか」という疑問です。歌舞伎の名跡には明確な格式の序列が存在し、成田屋においては「新之助 → 海老蔵 → 團十郎」と出世していくのが通例となっています。
海老蔵が若手から中堅にかけての勢いや荒削りな魅力を象徴する名であるのに対し、「市川團十郎」は歌舞伎界全体を統率する重責を伴う止め名です。十三代目が襲名に際して名乗った「白猿(はくえん)」は、祖父である十一代目や五代目團十郎が用いた俳名に由来し、「祖先の名前に遠く及ばない(猿である)」という謙虚な思いと、さらなる芸の高みを目指す決意が込められています。
父である十二代目團十郎が2013年に急逝してから約9年、コロナ禍による延期を乗り越えて2026年秋に実現した襲名披露興行は、歌舞伎座を満員にし、名実ともに当代最高峰の座を継承した歴史的転換点となりました。