まず押さえておきたいのが、作品の基本情報です。「捨身飼虎図」の読み方は「しゃしんしこず」と読みます。文字通り「身を捨てて虎を飼(養)う図」を意味し、古代仏教美術を代表する白眉として日本史の授業でも必ず登場する重要作品です。
この名画が描かれているのは、法隆寺が所蔵する国宝「玉虫厨子」の台座右側面(基壇部分)です。玉虫厨子は飛鳥時代(7世紀中頃)に制作された仏具で、推古天皇の宮殿にあったとも伝えられる由緒ある工芸品。透かし彫りの金具の下に本物のタマムシの美しい翅(はね)が敷き詰められていたことからその名が付けられました。
厨子の扉や台座には、当時の貴重な絵画が「漆絵(うるしえ)」や「密陀絵(みつだえ)」と呼ばれる技法で描かれており、その中でも最も強い叙事詩的インパクトを放っているのが、この「捨身飼虎図」です。