アンパンマンの宿敵でありながら、バイキンマンは常にどこか「憎めない存在」として描かれている。主人公を追い詰める凶悪さよりも、詰めの甘さや作戦が裏目に出たときのコミカルさが前面に出る。この絶妙なバランス感を生み出しているのが、中尾隆聖の繊細な声のトーン変化だ。
怒り、企み、焦り、そして逃走時の捨てゼリフ。バイキンマンの感情線は目まぐるしく変化する。中尾は声のピッチを急激に変えることで、キャラクターの感情のブレを視覚以上の臨場感で視聴者に届けている。単に意地悪な音声を出すのではなく、バイキンマンという「少し生意気で甘えん坊な子供」のような青写真を感じさせる演技が、世代を問わず愛される最大の要因だ。