長谷川健太監督が率いるチームの戦術的特徴は、一言で言えば「極めて計算された堅守速攻」です。FC東京時代には自らの戦術をバスケットボール用語に例えて「ファストブレイク」と呼び、ボールを奪った瞬間から全員が猛烈なスプリントで相手ゴールへ襲いかかるスタイルを確立しました。
その基本構造は以下の3点に集約されます。
- コンパクトな4-4-2(または5バック併用)の強固なブロック:中央のスペースを徹底的に締め、相手を外側のサイドへ誘導してボールを奪い取る。
- ポジティブ・トランジションのスピード:ボール奪取の瞬間、迷わず縦へ推進。前線の個のスピード(G大阪時代の宇佐美貴史やパトリック、FC東京時代の永井謙佑やディエゴ・オリヴェイラなど)を最大限に生かす。
- 全員守備の規律と走力:前線の選手であっても自陣深くまでのプレスバックやカバーリングを義務付け、走れない選手はどれほど技術があっても起用しない。
しかし、この戦術にはネット上のサポーターコミュニティやSNS(X・旧Twitterや掲示板など)で常に激しい議論が巻き起こります。
肯定的な評判としては、「とにかく守備が崩れないので大崩れしにくい」「劣勢の試合でもワンチャンスで勝ち点3をもぎ取る勝負強さがある」「チームに戦う姿勢とハードワークが定着する」という称賛が並びます。実際、中位に低迷していたクラブのサポーターからは「まず負けないチームにしてくれた」と絶大な支持を集めます。
対照的に、批判的なネットの反応として目立つのが以下の声です。「相手に引いてブロックを組まれた際、遅攻の崩しのアイデアが乏しい」「攻撃が前線の外国籍FWやアタッカーの個の力頼みになり、彼らが封じられると手詰まりになる」「ボール保持率が低く、見ていてエンタメ性に欠ける」といった指摘です。
現場取材を重ねるサッカージャーナリストの間では、長谷川戦術は「勝率を極大化するための極めて合理的なアプローチ」と評価されています。理想的なパスサッカーを掲げて自滅するチームが多いJリーグにおいて、リアリズムに徹してトロフィーをもたらす彼のスタイルは、ある種の究極の職人技と言えるでしょう。