往年の名作刑事ドラマが地方局やBS局で頻繁にアンコール放送されるなか、『はみだし刑事情熱系』がテレビ朝日の地上波デイタイム枠でほとんど編成されない事態には、複合的な制作裏事情が横たわっています。テレビ関係者や著作権管理の専門家への取材によって浮き彫りになったのは、単なる「古い作品だから」では片付けられない3つの構造的障壁です。
第一の壁は、シリーズ全160話以上に及ぶ膨大なゲスト出演者と所属事務所の権利関係です。1990年代後半から2000年代前半のテレビ業界では、再放送や二次利用に関する契約条項が現在のように包括化されていませんでした。実力派バイプレイヤーや当時の若手俳優、さらには既に芸能界を引退した関係者一人ひとりの肖像権や二次利用権をクリアし、出演料を分配する実務コストは、広告収入の縮小に悩む現在の地上波編成において極めて重い負担となっています。
第二の要因として挙げられるのが、作品のトレードマークでもあった主題歌および劇伴音楽の権利問題です。PART1のオープニングを飾った近藤真彦の「ミッドナイト・シャッフル」や、PART3の「KING and QUEEN」、そして主演の柴田恭兵自身が情感を込めて歌い上げた「Lights and Shadows」「夜を抱きしめて」など、本作の楽曲はミリオンセラーやオリコン上位を記録した名曲揃いでした。しかし、大手レコード会社や音楽出版社をまたぐ原盤権とシンクロ権の許諾手続きは、再放送の都度発生するため、費用対効果の面でハードルが高くなります。
第三に、平成初期特有の過激なアクション演出と現代の放送基準(コンプライアンス)のギャップがあります。警視庁広域特別捜査隊(通称:広域)が繰り広げる市街地での激しい銃撃戦、お台場周辺の公道を疾走するパトカーのドリフトやカースタント、犯人を追い詰める際の肉体的な衝突描写は、当時の視聴者を熱狂させました。しかし、昼下がりの再放送枠で求められるマイルドなファミリー向けクライムサスペンスの枠組みと照らし合わせた際、民放キー局の自主規制ガイドラインとの兼ね合いで調整が必要となるケースが生じています。