「焼き魚は強火で一気に焼けばいい」という思い込みこそが、サバの身を硬く乾燥させる元凶です。魚肉の主成分であるタンパク質(ミオシンやアクチン)は、中心温度が約65℃を超えたあたりから急激に収縮を始めます。温度が高すぎたり焼き時間が長すぎたりすると、筋繊維が強く縮み、内部に抱え込まれていた水分と良質な脂(オメガ3脂肪酸など)が肉汁(ドリップ)として外へ絞り出されてしまいます。
さらに見落とされがちなのが、皮と身の間にある「脂質層」の扱い方です。サバ特有の豊かな旨味は皮下に集中していますが、急激な強火で皮だけを焦がすと、熱の伝達が不均一になり、中まで火が通るころには身の水分が失われてしまいます。表面の皮を収縮させすぎず適度に蒸気を逃がす「飾り包丁」を入れ、適切な熱対流で内部温度をじっくり70〜75℃前後に到達させることが、ふっくら焼き上げるための大原則です。