イギリス国旗を見る誰もが一度は抱く疑問が、「イギリス国旗ウェールズなぜないのか?」という点です。ウェールズの公式旗には、緑と白のツートンカラーに勇壮な「赤い竜(レッド・ドラゴン)」が描かれています。これほど印象的な意匠が、なぜ連合王国の国旗から完全に排除されているのでしょうか。
ネット上では「竜のデザインが複雑すぎて旗の縫製が難しかったから」「他国とのデザインバランスが崩れるから」といった憶測が散見されますが、これらは事実ではありません。イギリス国旗ドラゴンが入らない理由は、極めて冷酷な法制史と国家統合のタイミングにあります。
イングランドによるウェールズの武力征服は13世紀末のエドワード1世の時代に完了していました。その後、1535年および1542年のウェールズ法(合同法)により、ウェールズは制度上完全にイングランド王国へと組み込まれました。
つまり、1606年に最初の国旗が制定された際、ウェールズは独立した対等な王国ではなく、すでに「イングランド領の一部」として法的に扱われていたのです。したがって、セントジョージ・クロス(イングランドの旗)の中にウェールズも包含されていると見なされ、独自の意匠が盛り込まれることはありませんでした。
現代では「国旗の中央に赤い竜を配置すべきだ」「緑のラインを入れるべきだ」という改訂運動がウェールズ選出の議員らによって度々提起されていますが、数百年にわたり定着した国際的ブランドと紋章学の伝統を変更することは容易ではなく、現状のデザインが維持されています。