読者の間で誤解されがちなポイントの一つが、「無垢の巨人を元に戻すための治療法が存在するのか」という点です。物語の終盤に至るまで、医学的・科学的な治療法は一切存在しませんでした。無垢の巨人が元に戻る方法は、作中において極めて限られた唯一の手段、すなわち九つの巨人の能力者を捕食し、その脊髄液を完全に摂取して能力を継承することだけでした。
この事実を証明したのが、ユミル(104期生)の過去です。マーレで約60年もの間、無垢の巨人として壁の外を彷徨っていた彼女は、壁外奪還作戦に向かう途中のマルセル・ガリアード(顎の巨人)を偶然捕食したことで、奇跡的に人間の肉体を取り戻しました。同様に、シガンシナ区奪還作戦で瀕死の重傷を負ったアルミン・アルレルトも、巨人化注射によって一時的に無垢の巨人となり、ベルトルト・フーバー(超大型巨人)を捕食することで生還を果たしています。
では、能力を継承できなかった膨大な無垢の巨人たちはどのような幕引きを迎えたのでしょうか。物語のクライマックスにおける無垢の巨人の結末は、劇的なものでした。スラバ要塞から運ばれ天と地の戦いで巨人化させられたジャンやコニー、そしてラガコ村に残されていたコニーの母親に至るまで、エレン・イェーガーの死と始祖ユミルの解放によって、世界から巨人の力そのものが消滅しました。巨人の呪縛が解かれた瞬間、骨肉の巨躯は蒸発し、囚われていた人々は無傷の人間の姿へと解放されたのです。